大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)515号 判決

原審第十回公判調書及び第十二回公判調書の記載によれば原審第十回公判に於て検察官が臨時建築等制限規則による許可(及び資材割当)申請書一通の証拠調を請求し裁判官が之を採用し第十二回公判に於て裁判官が右申請書の証拠調を為した上之を領置したこと、其の証拠調の方法として之を被告人及び弁護人に示したのみで朗読の方法をとらなかつたことは所論の通りであつて右申請書は証拠物中書面の意義が証拠となるものであるから其の証拠調は之を提示する外朗読の方法をも併せ行わなければならない場合なるに拘らず之を行わなかつたのは妥当でない。しかしながら右申請書は被告人より富山県へ提出したものなることは争なきところであるから被告人は其の記載内容を熟知して居る筈であつて之を朗読しなくても之を示すのみで被告人の保護に欠くることなきことは明瞭なるのみならず、刑事訴訟規則第二百六条によれば証拠調に関する異議の申立は個々の行為ごとに、遅くともその行為が終つた後直ちにこれをしなければならないに拘らず原審公判調書によれば被告人及び弁護人は何等之に対する異議の申立を為していないのであるから之を証拠として援用することは何等違法の点なく論旨は採用できない。

第三点について。

刑事訴訟法第二百五十六条第三項ができる限り日時、場所及び方法を以て犯罪事実を特定することを要求しているのは犯罪の日時場所及び方法等は犯罪の構成要件ではないから必ずしも記載することを要しないが犯罪構成要件の記載のみではその公訴事実を特定できないことが多いから、これを特定するために犯罪の日時、場所、方法等をできるだけ明示せよとの趣旨であつてこれ等の記載がなくても公訴事実が特定せられる場合ならば、その記載なき起訴状による公訴の提起といへども違法ではないと解すべきである。本件昭和二十四年十二月十日附起訴状には犯罪の場所について稍明確を欠く嫌はあるが公訴事実として「被告人は富山市南田町二番地に於て建築請負業をしているものであるが法定の除外理由がないのに昭和二十四年八月十日頃建設大臣の許可を受けないのに拘らず富山市南西橋詰河川敷地左岸に於て建築工事を施行し同年九月十九日頃迄に床面積百平方メートルを超ゆる木造二階建床面積六十坪(百九十八平方メートル)のマーケツトに準ずる建築物を築造したものである」と記載し適用すべき罰条として臨時物資需給調整法第一条第四条臨時建築制限規則第四条第十八条が表示されているので右は被告人に対し臨時物資需給調整法第一条第一項の規定による命令違反の罪について起訴したものであること明らかであつて何等公訴事実の特定において欠けるところなく本件公訴提起の手続はその規定に違反したものでなく有効なること勿論である。而して原判決は第九の犯罪事実の摘示に於て場所について「富山市内を貫流する神通川の富山大橋南西橋詰河川敷地(左岸)」と記載するの外起訴状の公訴事実の記載と大体同様の記載をしているのであつて原審が右同一の公訴事実について審判したものであることは明瞭である。そしてこの犯罪事実についての原判決挙示の証拠を検討するに原判決が其の援用の証拠によつて判示の事実を認定したのは相当であつて原判決は所論の如き違法の点なく論旨は採用できない。

(註 本件は事実誤認により一部破棄自判)

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